その効能と優れた材質により、太古から様々な用途で利用されてきた「孟宗竹」が日本へ渡ってきたのは、わずか250〜300年前の事。
「竹」の驚異的な繁殖力と驚くべき効能の数々をご紹介します。
柔と剛二つの顔を持つ理想的な資材
竹という素材は、その強靱さには不釣り合いな優れた柔軟性を持っています。柔軟性は加工を容易に、強靱さは耐久性につながる事から、竹カゴや簾、扇子等、日常品にはもってこいの素材といえます。また釣り竿には古くから竹が使われていますが、強靱さと柔軟性が生み出す強力な反発力を利用した、まさに竹ならではの道具といえるのではないでしょうか。
竹の強靱さを建築学的に分析すると、鉄筋コンクリートの組織構造に例えられるといいます。組織構造が頑強な上、中空になっていることから、木材に比べ軽く、物干し竿等、軽くて丈夫でなければならない素材にも最適です。
さらに竹には低伸縮性という大きな特徴があります。湿気が多い日本ではこの条件を満たす素材が非常に重要です。化学素材に取って替わるまで、計算尺や物差し等に竹が使われてきたのは、抜きんでた低伸縮性のおかげです。
以上の特性は、建築資材として重要なものばかりです。
先の「物差し」の例でもあるように、化学的な素材で代替していく事は可能かも知れませんが、昨今のシックハウス症候群などにも見られるように、化学物質は一方で人体にやさしくない側面もあります。竹素材は無害なばかりでなく、人体に良い効能をもたらすことでも知られています。
「竹の神秘」その効能と浄化作用
竹は抗菌、鮮度保持能力に優れた素材として知られています。昔の旅人は、竹の皮でおむすびを包み、竹の水筒に水を入れ長旅へ備えましたが、これは竹の鮮度保持能力、抗菌作用を利用した先人の知恵であったといえます。
また「竹細工の職人は水虫にかからない」といわれているそうですが、実際に竹の含有成分中に白セン菌(水虫)に対する抗菌物質が発見されたそうです。一方、中国では竹のエキスは万病の秘薬とされており、現代医学でも制ガン効果があるとされている多糖体物質が、多く含有されていることが判っています。
動物の世界でもその効能を垣間見ることが出来ます。竹の笹を主食にするパンダの糞が全く匂わないのは、竹の含有成分に異臭を分解する物質を多く含んでいるからであり、野生の熊はその効能を利用し、狩りの前に竹の笹を食べ、体臭や息の臭いを抑えていると言われています。
現在これらの特性を活かし、消臭剤などの様々な製品開発が行われています。また、建材としても優れた資質を持っていることから、これらの効能を住環境へ取り入れる事が注目されています。また、その旺盛な繁殖力で年々増加する一方の放置竹林被害を抑制する意味でも、竹建材の利用は有意義なものであるといわれています。
驚異的な生命力と環境問題
竹の生命力には驚異的なものがあります。研究者の間では有名な話なのですが、ベトナム戦争の枯れ葉剤にも、広島の原爆にも、唯一生き残った植物は「竹」でした。広島の爆心地近くの竹は黒く焼けただれはしたものの、一年後には完全に再生されていたという報告が残っているそうです。
通常の竹は60~80日で14~15mにまで生長します。その後成長を止め、3年以上経てば有効資源として活用出来る成竹になります。これは、通常の木材ならば50年を要する期間に相当するので、森林伐採が問題視される中、代替資源として注目されるべき資材であると言えるでしょう。
逆に、竹を利用せずに放っておくとどのような事になるか。まさに今、日本ではその問題に直面しています。手入れをしていない竹林は、その繁殖力ゆえに見境い無くその領土を拡大して森林を浸食し、日光を遮り下草を枯らし、生態系へ深刻な影響を与えていきます。また自然界だけでなく、がけ崩れなどの災害を助長する結果を招くことが問題視されています。
これらの放置竹林が近年急激に増加している要因は、国産のタケノコや竹材の需要減に他なりません。一旦繁殖すると駆逐が容易では無い放置竹林。今後はこれらの問題を解決する意味でも、積極的に竹資源を利用していく必要性があるでしょう。